館内案内
<正面> 収納可能な縁台 ばったり床几(ばったりしょうぎ) | |
<正面> 格子戸 | |
<正面> 軸刷の大戸(じくずりのおおど) | |
<通り土間 表> 通り土間(とおりどま) | |
<通り土間 中ほど> 格子大戸 | |
<通り土間 奥> 土間は東に、座敷は西に | |
<通り土間 奥> カッテのかまど | |
<ミセノマ> 蔀戸(しとみど) | |
<ナカノマ> 関宿がこれまでいただいた賞状 | |
<ザシキ> 一列に並ぶ居室 | |
<ザシキ 表> 箱階段(はこかいだん)を踏みしめて | |
<表二階> 天井の低い厨子二階(つしにかい) | |
<ザシキ 表> 奥を見る | |
<土蔵二階> 町並み保存事業によるまちなみの移り変わり |
収納可能な縁台 ばったり床几(ばったりしょうぎ)
ばったりは、町家の軒下に取り付けられた縁台です。夜間や使わない時には引き上げて収納できるようになっています。
本来の使用法は、商品を陳列して売るための棚で「揚見世(あげみせ)」とも言われます。床机は持ち運びができる折り畳み式の椅子のことですから、座るのにもつかわれていたのでしょう。
関宿に残る“ばったり”も数が少なくなっていて、今では2例ほどなのですが、以前はもっとたくさんの“ばったり”がありました。まちが静かになり、店舗そのものが減ったことで、商品を軒先に並べること自体がなくなってしまったこと。さらには、重くて上げ下げが大変であることなどから、破損が進んだ段階で取り外されていったのでしょう。
“ばったり”は、座面と足とでできており、座面を建物についた蝶番(ちょうつがい・ちょうばん)を支点にして持ち上げると、足が自動的に座面の裏側に収納される仕組みになっており、柱などにつけられた金具で座面を止めて収納します。
逆に下す時には、金具を外せば座面を倒すにしたがって足が自動的におりてきます。“ばったり”の名は、足を下す時の音から付いたと言われています。
板大戸(いたおおど)
関まちなみ資料館の出入口には、板で作られた幅が1間(1.8m程)ある大きな戸が取り付けられています。こうした戸を「大戸(おおど)」といいます。大戸には向かって右下のところに小さな戸が仕込まれています。これを「潜り戸(くぐりど)」といいます。大戸を閉めていてもこの潜り戸で出入することができるわけです。
関宿の町家では、建物正面の出入口に潜戸付きの板大戸を取り付けることは一般的ですが、多くは摺り上げ形式で2枚の板戸を上下に動かすようになっています。
しかし、関まちなみ資料館の大戸は、建具が左右の一方を軸にして扉のように開く「軸刷(じくずり)」といわれる形式です。関まちなみ資料館の軸刷の大戸は、関宿で現在でも見ることができる唯一のものです。
通り土間(とおりどま)
関宿の町家は、間口が狭く奥行のある「ウナギの寝床」とも呼ばれるような敷地に、街道に面して間口いっぱいに建てられています。
間取は正面から見ると東側に街道から裏庭まで通じる「通り土間(とおりどま)」があり、これと平行に西側に居室を奥行方向に3室から4室並べています。
通り土間は町家の正面では出入口(玄関)としての役割を持ちますが、奥に進むとかまど、井戸、流しなどが設けられて「カッテ」(炊事場)になっています。
また、隣家が接して建てられているため、この通り土間を通らなければ敷地の裏に抜けることはできません。
格子大戸(こうしおおど)
関まちなみ資料館の通り土間には、もう一枚大戸があります。板ではなく格子で作られた格子大戸です。
格子大戸が付けられた位置は、ミセ(来客の受付。玄関にあたる場所)とカッテ(かまどや井戸がある)との境にあたるところです。格子大戸は通風を確保しながら目隠しとしても機能していたはずで 、この場所に格子大戸が設けられたということは、町家の中で公私の領域がしっかりと分けられていたということです。
土間は東、座敷は西 関宿の町家の通り土間
通り土間は町家の正面では出入口(玄関)としての役割を持ちますが、奥に進むとかまど、井戸、流しなどが設けられて「カッテ」(炊事場)になっています。
関宿の町家の間取で関宿特有と言えるのは、建物の中で通り土間は東側に、座敷は西側に配置されているということです。このことは、町家が街道の南側にあるか北側にあるかに関わらず、関宿の町家に共通しています。
このことがどのような理由によるのかは今ではわかりませんし、法律などで決められていた形跡もありません。おそらく自然にそうなっていったのでしょう。しかし、多くの人々た密集して暮らしていた関宿では、こうした自然に生まれたようなきまりの中に、多くの人々の暮らしやすさに影響する要素が含まれているように感じます。
蔀戸(しとみど)
蔀戸は上下に分かれた板戸で、上の戸は上部が鴨居に金具などでつながれていて、そこを支点に吊り上げる形式です。一方、下の戸は柱の間にはまっているのですが、上の戸を上げると取り外すことができるようになっています。
蔀戸は古くは平安時代頃から使われており、現在でもお寺や神社などで見ることができます。お寺や神社では外に向けて吊り上げるのですが、旧別所家住宅の蔀戸は、屋内側に吊り上げるようになっていることも特徴的と言えます。実は、関宿にある古い町家で蔀戸が残る例はこの建物だけで、今でも実際に使われている例はありません。
なぜこうした形式の建具が使われたかははっきりとしませんが、二階の壁を後退させているこの建物の構造的な特性によるのではとの考え方があります。関宿の町家は一階と二階の壁位置が揃うことが一般的で、このことにより摺り上げ戸は上部に戸袋を作り付けることができます。逆に、二階の壁が奥側に後退させられていたために摺り上げ戸等を使うことができなかったという訳です。
一列に並ぶ居室
関宿の町家は、間口が狭く奥行のある「ウナギの寝床」とも呼ばれるような敷地に、街道に面して間口いっぱいに建てられています。敷地間口は2間半(約4.5メートル)から3間(約5.4メートル)程が最も多く、大きなものではこの1.5倍から2倍ほどのものもあります。
間取は正面から見ると東側に街道から裏庭まで通じる「通り土間(とおりどま)」があり、これと平行に西側に居室を奥行方向に3室から4室並べています。このことから、建物の奥行は6間(約10.8メートル)から7間(約12.6メートル)ほどになります。間口が大きな町家では居室が2列並び、居室の数が多くなります。また、通り土間の下手に「シモミセ」と呼ばれる部屋が付く場合もあります。
居室は街道に面した前面から「ミセ」「ナカノマ」「ザシキ」と呼ばれています。「ミセ」は街道に面した板の間で、商品を並べたり旅籠屋では宿泊客の荷物を並べたりしました。「ナカノマ」は一列に並ぶ居室の中央にあって外には面していません。仏壇が置かれることが多いようです。「ザシキ」は縁廊下を介して「中庭」に面しており、主人の寝室や客間として使われていました。
町家の調度 箱階段(はこかいだん)
“箱階段(はこかいだん)”は、側面に引き出しなどが付いた箪笥としても使用できる階段のことです。“箱段(はこだん)”とも言います。
関まちなみ資料館の箱階段は、表二階に上がるために備え付けられたものですが、帳場の後ろにデンと構えています。階段は絶対に斜めにかけられるので、その下はあまり有効には使えない場所になることが多いのですが、この無駄になりがちの空間を収納として有効活用する箱階段は、狭い町家ならではの調度と言えます。加えて抽斗には素敵な金具が付き、うるしなどが塗られた表面は美しく、インテリアとしても最高です。
正面に「手を触れないでください」との札はありますが、箱段を使って二階に上がることは許されています。