
関宿の町家の庇の軒先から、幕のように垂れ下がっている板です。
宿場として栄えていた頃、関の町家の前面は“擦り上げ戸(すりあげど)”という建具が一般的で、戸を開いている昼間は店先が街道に開放されていました。幕板は、風雨が激しい折に、この開放的になっている店先に雨露が入り込み、商品や客の荷物を濡らさないよう付けられたものとされ、“霧除(きりよけ)”とも呼ばれています。
現在でも、関宿の町家の多くに取り付けられていますが、建てられた当初からあるものだけでなく、後になって取り付けられたものもあるようで、流行した時期があったのかもしれません。

この幕板は、横に長い板に縦に桟木を板の裏側から釘で打ち、桟木の板から突き出た部分を庇屋根を支える軒桁の横面に釘で打ち付けています。桟木は薄い板が変形しないよう等間隔に付けられていますが、軒桁にしっかり固定するのにも役立っています。下が外に突き出るように斜めに取り付けられています。
関宿には違った作り方の幕板もありますが、この形式が最も数が多く普及版といえるでしょうか。ただし、長い横板は決して安価なものではなく、幕板を取り付けることはステイタスの一つでもあったと思われます。現在残る幕板は、実用からというよりは、そうしたステイタスが守ってきたものなのでしょう。
さて、写真の幕板には数か所に穴があけられています。
雨露をしのぐための幕板ですが、「付けたはいいが店先が暗くなって・・・。」というわけで、明り取りの窓が開けられたのでしょう。
しかし、窓を開けたままではそこから風雨が入り込んでしまいます。というわけで、この幕板では、窓の裏側にスライド式の板戸が仕込まれていて、雨露が激しい折には閉めることができるようになっています。

時々の必要性にあわせ、様々な工夫がなされ、新しい形が生み出されていることは驚きです。
※この場所に行き、実際に見るためのヒント
●関宿の西部。新所北側。
●幕板はたくさんあります。見比べながら探してみてください。
●開け閉めをする場合は、壊さないように慎重にお願いします。
●開け閉めの時、上から土埃が落ちてきますのでご注意ください。
※参考にさせていただいた本など
『関宿 伝統的建造物群保存地区調査報告』昭和56年/三重県鈴鹿郡関町
『東海道五十三次関宿 重伝建選定30周年記念誌 -まちを活かし、まちに生きる-』平成27年/亀山市
『東海道五十三次関宿 重伝建選定30周年記念誌(別冊) 関宿伝統的建造物の前面意匠』平成27年/亀山市