“馬繋ぎの環金具”

(3)特色のある町家と細部意匠
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 町家の通りに面した柱に付けられた直径5㎝程の丸い金具です。人を乗せたり荷物を運んだりした馬の手綱をかけるためのもので、“馬繋ぎの環(金具)”と呼ばれています。

柱中ほどにある馬繋ぎの環金具

 この環金具は、柱の中ほど、大人で言えばヘソの高さ位の位置に付けられています。関宿の町家では、同じような輪金具が土台や柱の根本などの低い位置に付けられていることに気が付きます。これも使用法としては同じなのですが、繋がれた動物が馬ではなく牛だったそうです。そのほうが、牛や馬がおとなしく待っていると言うのです。

 つまり、関宿では馬は柱の中ほどの高い位置で、牛は柱の根本や土台など低い位置でつないだという訳です。そうなると、低い位置に付けられた環金具は“牛繋ぎの環金具”とでも呼んだほうが相応しいのかもしれませんが、そんな風に呼ばれていることは聞いたことがありません。

柱の低いところにある環金具

 さて、以前奈良県にある古いまちなみを見学した時、同じような環金具があることに気が付き、案内人さんに「馬繋ぎですか?」と尋ねてみました。

 すると答えは「はい、上は牛、下は馬です。」と。

 えっ。関宿とは全く逆ではないですか。

 奈良県は大和国、そして関宿は伊勢国。お国が違えば、牛や馬の性格まで違ってくるのかとびっくりした次第です。性格の違いというよりは、しつけ方の違いなんでしょうけどね。

 しかし、こんな大切なことが国によって違っているのは、今で言えば県によって交通ルールが違っているようなもの。

 天下の往来東海道で、牛や馬が暴れだしては大変です。関宿にお越しの折は、くれぐれも繋ぐ位置を間違われませんように。

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※この場所に行き、実際に見るためのヒント

●関宿の各所。いくつ残っているのかは調べたことがありません。
●写真上(馬用)が中町五番町、下(牛用)が新所地蔵町です。 馬繋ぎの輪金具の説明「輪金具に 手綱つながれ 馬や牛」は『関宿かるた』の「わ」。

<参考にさせていただいた本など>

『関宿 伝統的建造物群保存地区調査報告』昭和56年/三重県鈴鹿郡関町

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