“コワーキングスペース”のメンバーになった件

”関宿”まちなみ暮らし

 令和元年10月1日、「関宿まちなみ研究所」のデスクを、四日市市にあるコワーキングスペースに開設した。

 そもそも、「関宿まちなみ研究所」を開設したのは2月の事だった。自宅の一部に仕事スペースを確保し、パソコンや資料類を並べ、それなりの仕事スペースを作ったは良かったものの、実際に仕事をしてみると座敷に座りっぱなしでは腰に負担がかかることと、何より寒さが厳しかった。

 古い町家の我が家。街道と土間に面した一角「ミセの間」が研究所のスペースである。部屋全体を温かくすることはほぼ無理と言って良い。“少しばかりの贅沢”とホットカーペットは用意したものの、結局のところは屋外用の綿入りヤッケを着込んでの仕事だった。

研究所打合せテーブルに飾った水仙

 何とか寒さを我慢して冬は乗り切ったものの、落ち着けたのは2~3か月程。気が付けば夏がやってきていた。夏の初めは通り(東海道)を通る人たちの話声が聞こえてきて面白いなんてことも思っていたが、風通しのために通りに面したガラス戸を開けるようになると、話し声だけでなく人の気配が少し気になるようになってきた。街道に面した開口部には格子戸があるので中は見えないのだろうが、ガラス戸が開いていれば中を除きたくなるのが人情というもの。暗い屋内に興味を惹かれて格子に顔を近づけた観光客と、人の気配に気づいて目を上げた私が目を合わすことが何度かあった。お互いに驚くだけではすまず、なんだが気まずい空気が流れるのだ。

 そして、冬の寒さは着込むことで何とか我慢できたが、夏の暑さは脱ぐのにも限界がある。たとえ自宅とは言え仕事場、そして「ミセノマ」という以上、恥ずかしい格好ではいられないから。

 そんな折、外仕事で一緒になった若い経営者から「本社は自宅に置いていますが、実際の仕事はコワーキングスペースでやっています」ってことを聞いた。“コワーキングスペース”なんて今風のものが流行っていることは知っていたが、都会の事だと思っていたし、古い町家をこよなく愛する自分には縁遠いものだと思っていたのだが、とうとう夏の暑さに耐えきれず、近辺にあるのならと調べてみることにした。

 すると、関宿からもそう遠くはない津市や四日市市にもあるじゃないですか。冷暖房完備で1日使ったとしても1000円程度。これならばという訳で、パソコンと締め切りの迫った仕事道具一式を持参して、四日市市にあるコワーキングスペースに向かうことにした。

 関宿から四日市市中心部までは車で約45分。近鉄四日市駅近くの一日料金の設定がある駐車場に車を止めて一番街アーケードの中へと入っていくと、目指すコワーキングスペースはとあるビルの3階にあった。エレベーターを降りるとずっと奥のカウンターに受付の女性が座っている。ドキドキしながら私が初めての利用だと伝えると、ひととおり使い方を教えてくれて、ビジター用デスクの中から空いているデスクを選ばせてくれた。

四日市市 一番街商店街

 ビジター用デスクは決して広くはないが、机の周りはコの字型に囲われていて、背中合わせの人はいるもののそんなに苦にはならない。むしろ、周りに人がいることで自分も仕事に集中できた。冷房が利いていて快適なことはとにかくありがたかった。

 暑くなりそうな日を選んで週1~2回使っている内に余裕も出てきて、周りのデスクを使っている人を観察してみたりするようになった。パソコンを開いて仕事をしている人もいるようなのだが、むしろ参考書を見ながら勉強している高校生が多い事に驚いた。受験勉強の場所になっているのだ。図書館の席を受験勉強の学生が占めている状況はあまり好ましいとは思っていなかった私なのだが、有料のデスクを借りてまで受験勉強する高校生の姿はなんだか可哀そうに思えたものだった。

 ところが、よく見てみると高校生が勉強している机には多くの参考書が並べられている。よくよく確認してみると、高校生が勉強しているデスクはメンバー用デスクで、月極で確保されているのだ。確かに、自宅はもちろん、図書館なんかよりお金を払っているこのスペースの方が、能率は上がるのかもしれないが、恵まれているというのか、経済的格差はこんなところにも・・・なんて、ちょっと穿ってみてみたくもなったりした。

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 何度か通ううちに、ビジターとして毎回席を選ぶよりも、いっそのことメンバーになって自分のデスクを確保しようと思うようになった。そう、勉学に励む受験生に負けてはいられないのだ。そうすれば、少しの荷物は置いておくこともできそうだし、所属するところのない私には“メンバー”という響きも何となく暖かだった。そこで、ちょうど月の変わり目、ビジター10回利用で入会金が半額になるという特典を利用して、メンバー(会員)になることにした。

 確保したスペースは施設の少し奥まった場所にあるメンバー専用フロア。フロアの外回(窓際)には扉付のそれぞれ1畳程の個室スペースが並び、通路を挟んだ中央部が背中合わせのデスクスペースになっている。私が選んだのはそのデスクスペースで、ビジター用デスクよりは少しだけ机も広く、椅子も少しゆったりしたものになっている。早速に、パソコンの拡張ディスプレイを持ち込んで(これは置きっぱなし)仕事を始めることにした。

 コワーキングスペースでの仕事は実に快適である。

 自分だけのスペースなので、必要なものを持ち込んで置いておくことができるし、周りの人に迷惑をかけない程度であれば、自分なりのアレンジも可能だ。周りにも仕事や勉強をしている人がいるので、しっかり仕事をしようという気にもなる。

 冷暖房、Wi-Fi無線LAN、カラー複合機、会議室に打ち合わせテーブルと仕事をするのに必要な環境はほぼ整っている。その上、長時間いても快適に過ごせるよう、レギュラーコーヒーの自販機、ティーサーバー、ドリンクやスナックが買えるオフィスコンビニ(この言葉も初めて知った)、喫煙ボックス、ソファーの休憩スペースなども整っている。そして、四日市の商店街にあることで、昼食はもちろん必要なものの買物にも便利だし、気分転換の散歩にも出かけることができる。

コワーキングスペースのソファースペース

 どうも、会員の中には、同じ利用者同士で仕事をコラボしている方もいらっしゃるようで、利用者相互の交流が可能なことも謳い文句になっている。確かにロビーにはメンバーがやっている英会話教室などのチラシが貼られている。まっ、私のいる業界はそうした一角に入り込めるような性格のものではないとは思うが。

 一方で、通うためのガソリン代や駐車場代が必要なことや、行き帰りに商店街や飲み屋街の誘惑に抵抗しなければならないことは注意が必要だ。しかし、それもこうした快適な環境を自分で用意しようと思うと、現在のメンバー料金では絶対に無理なことなので、十分コストパフォーマンスを満たしていることは間違いない。

 かくして、「関宿まちなみ研究所」などと地名を冠する研究所としては、関宿の外に事務所を構えることに少々後ろめたさを感じながらも、実に快適な仕事場所を確保することができたのだった。

 なにより自分の居場所ができたことは嬉しいことだ。会員になる時の書類には、会社名(屋号)や業種をかく欄があった。さんざん迷った挙句、「まだ開業準備中なんですが・・・」などと言い訳しながら、会社名(屋号)には「関宿まちなみ研究所」と、業種欄には「古民家再生コンサルタント」(実に怪しい!!)と書いてしまった。

 すでにフロア案内には私のメンバー用デスク番号とともに「関宿まちなみ研究所」の名が書かれている。本社(自宅)にはまだ小さな看板も掲げられていないというのに・・・である。少し複雑な心境でフロア案内を眺めながら「関宿にも古い町家をリノベーションしたコワーキングスペースがあってもいいんじゃないかな」などと、我が家も“ここをこうして、あそこをああして”と修復シュミレーションをしてみるのである。

“古民家再生コンサルタント”らしくありません?
う~ん、やっぱり怪しいか・・・。
コワーキングスペースでの開業準備はまだまだ続きそうだ。


 コワーキングスペースのメンバーとなった半月後、名古屋で設計事務所をされている方から、少しの期間だけど仕事を手伝いに来ないかとのお誘いをいただいた。以前から尊敬する業界の先達からのありがたいお話だったので、一も二もなくお受けすることにし、急遽9月末から名古屋に通勤することになった。

 そんなわけで、現在「関宿まちなみ研究所 四日市デスク」はほぼ土曜日か日曜日だけの開所になっている。


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